
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の疲労破壊は、繊維と樹脂の界面に生じる微小なき裂を起点とします。本研究室では、疲労に伴う微小なき裂の進展メカニズムを解明することで高寿命CFRPならびにリサイクルCFRPの開発に貢献しています。


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一般的に、CFRPの損傷は表面からの観察によって捉えられてきました。しかし、実際の損傷は材料表面だけでなく材料内部方向にも進展するため、損傷メカニズムの解明にはき裂の三次元的な進展過程を捉えることが重要です。本研究室では、大型放射光施設SPring-8の高輝度X線CTを用いて繰り返し負荷を受ける材料内部の微小き裂を非破壊で三次元的に追跡するシステムを独自に開発しており、疲労損傷の素過程の解明を進めています。

CFRPの疲労破壊の起点は炭素繊維とエポキシ樹脂の界面き裂と言われていましたが、無数に存在する炭素繊維の中からランダムに発生する界面はく離を検出することは非常に困難です。本研究室では、エポキシ樹脂中に炭素繊維を1本だけ埋め込んだ試験片を作成することで、炭素繊維1本から生じる界面き裂の可視化に世界で初めて成功しました。さらに、繰り返し負荷に伴う界面き裂の三次元的な進展を、放射光X線ナノCTを用いて高分解能で観察し、き裂の進展量と樹脂の破壊靭性とを定量的に結び付けました。

接着・粘着は、異なる材料の接合や再はく離性が求められる医療用途などで利用されており、その強度やはがれやすさの制御が重要です。本研究室では、接着層の変形や破壊のメカニズムに着目し、強度予測手法の確立と接合部の耐久性向上に取り組んでいます。さらに、これらの評価技術を食品の付着性や飲み込みやすさの評価にも応用しています。



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粘着剤は、電子デバイスの部品接合、シーリング、医療用テープなどに広く使われています。信頼性の高い製品を開発するには、粘着剤のはく離強度を適切に予測することが重要です。しかし、はく離時には粘着剤内部で不安定な破壊や大きな変形が生じるため、強度の予測は容易ではありません。本研究室では、粘着テープの力学特性に基づく汎用的なはく離強度評価手法の確立を目指しています。これまでに、測定条件に依存しない評価手法の検討や、粘着剤の微細構造が変形挙動に及ぼす影響の解明を通じて、強度予測に必要な要因を明らかにしてきました。現在は、はく離現象を特徴づける粘着剤の力学特性を適切に評価し、それらを組み込んだ強度予測モデルの構築を進めています。

接着接合は、異種材料を軽量に接合できる手法として、特に航空宇宙分野で重要な役割を担っています。一般に、部材を重ね合わせて接着剤で固定しますが、接着領域の端部に生じる応力集中が損傷の起点となります。また、接着剤層を薄くすると強度の向上が期待できる一方、厚さの制御が難しくなります。本研究室では、端部の応力集中を緩和しながら接着層の厚さを容易に制御する方法として、接着剤と両面テープの併用に着目しました。これまでに、静的強度と疲労寿命の向上を確認するとともに、厚さ30 µmの薄い接着層も容易に制御できることを示しました。現在は、複合材料の接着接合へこの技術を応用しています。

高齢化に伴い、飲み込みにくさを抱える人が増えています。本研究室では、これまで粘着剤の研究で培ってきた柔らかい材料の評価技術を応用し、食品の飲み込みやすさを定量的に評価する方法を検討しました。とろみを付けた食品がのどから離れる過程を、粘着テープのはく離になぞらえて測定し、嚥下動作を力学的に捉える研究を進めています。食品の付着性やはがれやすさを数値化することで、嚥下食を調整する際に、経験に加えて活用できる客観的な指標の確立を目指しています。

金属材料は、機械や構造物を支える材料として広く使われており、長期間の繰り返し負荷に耐える信頼性が求められます。本研究室では、材料内部から生じる超高サイクル疲労の損傷メカニズムの解明と、繰り返し圧縮負荷を利用した表面改質技術の開発を通じて、金属材料の長寿命化と耐久性の向上を目指しています。


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材料表面を起点とする一般的な疲労損傷と、材料内部から進行する超高サイクル疲労の違いを明らかにするため、本研究室では、き裂周囲の真空圧力に着目しています。表面き裂は大気に触れるため、き裂面が酸化します。一方、内部き裂は周囲を材料に囲まれており、真空に近い環境にあると考えられます。真空圧力を変えながら表面き裂の進展挙動を調べることで、超高サイクル疲労の損傷メカニズムの解明に取り組んでいます。

一般的な疲労損傷は材料表面を起点とするため、表面の力学特性を改善することが、材料の耐久性向上につながります。本研究室では、新しい表面改質技術として、高精度に制御した低い圧縮荷重を材料表面に繰り返し負荷するScanning Cyclic Press(SCP)法を開発しています。この手法により、材料表層にアモルファス層やナノ微細化層を形成できます。金属材料の疲労特性や耐食性を向上させる技術への展開を目指しています。

コンクリートは、砂、骨材、セメントからなる複合材料であり、その破壊過程は複雑です。また近年、鉄筋に代わり鋼繊維を分散させて十分な強度を持たせる鋼繊維強化コンクリート(SFRC)の開発も進んでおり、損傷過程の追跡や強度の予測が一層困難になっています。本研究室ではコンクリート材料の損傷メカニズムに着目し、強度の飛躍的な向上を目指しています。


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コンクリートの損傷の起点は、材料内部の気泡や、セメントと骨材の界面に形成される遷移帯から生じる微小き裂と言われています。しかし、高密度なコンクリート材料の内部で生じる損傷過程を観察することは容易ではありませんでした。本研究室では、大型放射光施設SPring-8におけるその場観察実験が可能な独自試験機を開発することで、材料内部の非破壊観察を成功させました。さらに、ひずみ量を可視化できるデジタル体積相関法やノイズ除去などの画像処理を組み合わせ、目視では捉えられないき裂の進展を内部構造と関係づけています。

SFRCの鋼繊維形状は、これまで実験によって試行錯誤的に検討されてきました。一方、飛躍的な強度向上には、コンクリート材料の損傷メカニズムに基づいて繊維形状を検討することが求められています。本研究室では鋼繊維とセメント界面の付着性や機械的引っ掛かり効果、母材の損傷を定量的に評価するために、放射光X線CTを用いた材料内部のその場観察を行い、界面付近でのき裂の発生や界面はく離を可視化しました。得られた画像を三次元ひずみ解析や数値解析と組み合わせることで、メカニズムに基づいた鋼繊維形状の検討を行っています。
